![]() | テロと家族 中日新聞東京新聞取材班 (2002/09) 角川書店 詳細を見る |
最近読んだ中で最も重く、そして辛い内容であった。本書をめくるたびに鎮痛な気持ちとなり、深刻な気持ちにならざるおえなかった。しかし本書がより多くの人に読まれることを切に願う。
9.11米中枢テロの犠牲者となった被害者家族、そしてそこから派生していったアフガニスタン空爆、パレスチナ、イスラエルと、家族を殺され、絶望的な状況のまま人生を破壊されていった多くの家族の悲しみと怒りの声を取り上げていったものだ。2002年に中日新聞・東京新聞に連載された内容に加筆されたもので、連載当時の反響は大きかったという。
日本編、ニューヨーク編、アフガン編、中東編の四部構成となっている。9.11の直接の犠牲者となった日本人家族、逆に9.11から派生したヘイトクライムにより一家の大黒柱を殺された米国のパキスタン人家族、米国の空爆により、家族の大半を失い、五体を欠落されて残されたアフガニスタンの家族、タリバンの兵として殉教者攻撃に向かう息子を持つ家族、9.11の容疑者とされながら消息を絶った息子の無実を信じるアラブの家族、イスラエル兵の殺戮に目の前で息子を殺されたパレスチナの家族、そして最後は逆に家族を殺され、日々怯えて暮らすイスラエルの家族・・・。
敵・味方、殺す側の国・殺される側の国といった枠組みを超え、家族の大切さ、家族の絆は変わることがない。9.11にWTCに飛び込んだジェット機の乗客として、妹と母を失った米国の家族の次の言葉がすべてを言い表していると思う。
「私が一番愛し、信じているのは家族です。テロリズムは、家族の愛までは壊せない。そしてテロリストにも、アフガニスタンの犠牲者にも、みんな家族がいる。彼らだってそれぞれ家族の一員だと気づいたんです」
本書を刊行した中日新聞・東京新聞取材班には最大の賛辞を贈りたい。このような企画、取材こそが本来のジャーナリズムのあるべき姿ではないかと思うのだ。日本のジャーナリズムが死に絶えたわけではないということを雄弁に物語っていると思う。

