![]() | ライヴ・エイドの軌跡―80年代の音楽状況を検証する旅 (2004/12) 別冊宝島編集部 詳細を見る |
1984年10月、エチオピア飢餓を伝えるテレビ番組をみて衝撃を受けたボブ・ゲルドフはすぐさま行動を起した。彼に賛同するミュージシャンたちによって、バンド・エイド~USA・フォー・アフリカ、そして1985年7月13日に開催されたライブ・エイドへと広がっていく。本書はそれから20年近く経ち、DVDが発売されたのに合わせ、当時を振り返りながらライヴ・エイドとは一体どういう意味があったのかを検証する内容となっている。
収録されている内容の中でも、『ミュージック・ライフ』誌1987年2月号に掲載されたボブ・ゲルドフのインタビューは特に印象深い。以下に抜粋しよう。
―「人を救う」と言うのは簡単なことですが実際に行動を起こすのは大変なことで、誰にでもできることではないと思いますが・・・・。
BG でもね、いざスタートしてしまえば、それほど大変なことじゃないよ。一番大切なのはスタートすることなんだ。あれもこれも考えるだけじゃなく、実際に始めることが大切なんだ。
何事かを実行するための核心を言っていると思う。思っているだけでは永遠に出来はしない。
人間にとって大切なことは2つあると思う。ひとつは「自分のやりたこいことをやること」もうひとつは「やらなくてはならないことをやること」だよ。僕にとって「やりたいこと」は「音楽」。そして「やらなくてはならないこと」は、人々や物事を少しでも良い方向へ向けるために努力することだ。僕は、このままこの2つのことを、やり続けていくだろう。
「やりたいこと」「やらなければならないこと」、それは人それぞれだと思うが、ゲルドフの言うとおり、どちらも大切なことだと思う。
日本人アーティスト・佐野元春のインタビューも印象深い。以下、佐野元春の発言
最初は自分の好きなミュージシャンが出演しているという興味から入っていったんだけれども、ライヴ・レコードを聴いたり、記録映画を観たりしているうちに、それだけではないことに気づいたんだ。ミュージシャンというのは、楽しい曲を書いたり、楽しい曲を歌ったりしているだけの気楽な人たちではなく、社会の不正に対して異議を申し立てたり、自分が正しいと信じるメッセージを発信したり、誰かをたすけるために行動したりする人たちでもあるのだ、ということを僕は知った。僕自身がミュージシャンになってからも、常にそうありたいと思ってきたし、いつも自分ができることをやってきたつもりです。
佐野元春が感じたことは、自分も過去のどこかで同じように感じたことだ。しかし本書を読んで思わざるおえないのは、佐野元春の発言とはうらはらに、政治的な発言がある種とタブーとなっている日本の音楽業界の貧困さというか、やはりずれた社会なんだろうな~と思わずにはいられなかった。どこがどうずれているのかは本書を読んで考えるべし。
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