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3/13 新宿 Naked Loft 鎌仲ひとみトークイベント 「メディア新世紀開幕vol.2」
木曜夜、鎌仲ひとみ監督トークライブへ。今回のイベント、告知がほとんどされていなかったようで、10日前の段階で予約者ゼロの情報あり。しかし会場である Naked Loft に入ると、お客さんはそこそこ入っていた。開演までには立ち見もでるほどの40名近いお客さんが集まり、ピーク時は50名ぐらいまで達したのではないだろうか。

今回のゲストは、イラクへの支援で、ヨルダンから帰国したばかりの高遠菜穂子さん。北海道からいらしたという。鎌仲さんいわく、日本のメディア史の中で最大のバッシングを受けた人ということだが、現在は逆にテレビなどマスメディアからの出演依頼がよくくるとのことで、取りまく環境の変化を語っていた。

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手前(後姿)・高遠菜穂子さん 奥・鎌仲ひとみ監督

マスメディアではほとんど報道されなくなったイラクの現状が今回の話題の中心。日本のジャーナリストに協力した現地のイラクの人たちは、今、どんどん殺されているという。それをまったく伝えようとしない日本のジャーナリストたちへの失望を、鎌仲さんは吐露する。米国のメディアですら伝えているというのに。

同じく、イラク戦争開戦の大義名分となった大量破壊兵器の存在について、デッチあげであったことが後に判明したのだが、誤った報道を垂れ流したメディア自身の検証や反省が米国ではあるにもかかわらず、日本では反省の姿勢もなく、誤った情報が残ったままとも語っていた。まったく同感。

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今回もプレゼンソフトとプロジェクターを活用し、わかりやすくまとめる。

米軍に殺されれば調査もなくテロリストにされてしまうイラクの実情(その発表を検証もなく垂れ流すメディア)、米国の情報操作が最も成功したというザルカウィのキャンペーン(架空の人物とみなされている)、2回目のファルージャー総攻撃でのメディア排除(さまざまな実験兵器が使われ、1回目以上の虐殺が行われた)、アラブ世界で日本より断然注目されている自衛隊の派遣(アラブ世界での日本のイメージ失墜)・・・などなど注目の話題がいろいろ出された。これらについてインターネットを調べれば情報を得ることは出来るが、実際にイラクを取材してきた鎌仲さんや、イラク支援を続けている高遠さんの口からでる言葉には大いなる説得力があった。

ある種の政治的タブーにされてしまっている憲法9条について、メディアの状況のおかしさについても語られていたが、 「タブーって、やぶってみたらこんなものかみたいなつまらないものだ」 と語る鎌仲さんの言葉が印象的だった。個としての表現自体もそうなのだろうが、勝手に自主規制している部分も強いと思う・・・いや、個としての表現自体こそにタブーの核心があるのではないか?

今回のトーク、一番の見所は最後の質疑応答だった。イラク情勢について質問を受けた高遠さんは、「覚醒」の状況など、複雑なイラクの内部事情を説明した。肉親を殺された憎しみによって、暴力でしか争いを解決できなくなってしまっているイラクの人たちに、暴力以外で争いを解決する方法を提示したいと語っていた。

その話しに関連して鎌仲さんは、ヒロシマ・ナガサキで肉親を失いながら生き残った人たちが、これから生きていく拠り所を、その体験を伝えることに求めたという話しをした。戦争によってトラウマをかかえてしまった人たちが、その後、生きていくということがどういったことなのか深く考えずにはいられなかった。イラクではほとんどの人が理不尽に肉親を殺されているという。

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「劣化」ウラン弾の模型を片手に解説する監督。「劣化」 という言葉のまやかしについても言及。

鎌仲監督は 1998年、イラクに取材に行き、14歳の白血病の少女、ラシャと出会った。彼女は 「私を忘れないで」 と書き残して、薬のないまま亡くなった。監督が核の問題に取り組み続けてきた原体験となっている。

●鎌仲ひとみ:確かにそこにある脅威 イラク-アメリカ-日本-そしてボスニアへ

今回のイベントで気付かされたが、監督は驚くぐらい誠実な人だ。多くの人は見て見ぬふりをするだろう・・・自分には関係ないと。しかし鎌仲さんは出会ってきた人、一つ一つの言葉に耳を傾け、自分の中で消化し、そして行動に移してきた人だと気付かされた。イラクでの体験から続いた六ヶ所村は、監督が自身に問いかけてきた一つの道筋となっている。

予約がゼロであっても、メール一つで50人ものお客さんが自発的に集まってくるというその理由は、鎌仲さんの人柄以外の何物でもない。ミュージシャンであるUAも、坂本龍一も、そんな驚くほどの誠実さにひきこまれ、自身の誠実さを問うたのでないだろうか。

鎌仲さんの数ある魅力の中でも最大と思われる「驚くほどの誠実さ」、それを知っただけでも十分収穫のあるトークライブ参加だった。自身のライブの準備など、かなり忙しい日々を送っているが、それでも行ってよかったと思う。また、前回トークライブのライブレポで知り合ったkikiさん、個人的に来ていた某新聞社会部の記者さん、日本イラク医療支援ネットワークの方と会話できたのもよかった。次回トークライブは 4/30 に予定されている。

追伸)
イベントに参加されたkikiさんのブログにてもレポートが掲載されました。こちらをご参照下さい。

<Naked Loft アクセスメモ>
前回の経験を活かし、今回はJR新大久保駅から Naked Loft へ向かった。これまたラブホテルを横目に空いている路地を歩いていき、スムーズに Naked Loftへたどり着くことが出来た。おかげで新宿駅と歌舞伎町の雑踏をくぐり抜けずにすんだ。新大久保からの方が近くていいよ。


<関連リンク>
●『六ヶ所村ラプソディー』~オフィシャルブログ(鎌仲さんブログ)
●イラク・ホープ・ダイアリー(高遠さんブログ)


<関連過去記事>
●1/15 新宿 Naked Loft 鎌仲ひとみトークイベント 「メディア新世紀開幕」

関連記事

テーマ:平和を願う - ジャンル:政治・経済

| 鎌仲ひとみ監督 | 23:59 | トラックバック:0コメント:6
コメント
良い経験だったようですね。
実りあるイベントだったようで。
本当に、真実隠蔽、隠匿の多さ、暴露された時の
人々の反応、加害者、被害者の意識の違い・・・
それぞれですよね。
経験を後世に残し、活かす人。
尊敬せずにいられません。
2008.03.15 Sat 15:06 | URL | saruninko
お疲れ様でした
N郎さんから、今回参加者がすくなさそうって、聞いていたので、お店に入って、びっくりしました。
でも、それも、鎌仲監督の人柄だからこそなせる技なんでしょうね。
鎌仲さんの誠実さと同時に、高遠さんの平和に対する真剣な思いに触れる事ができてよかったです。
自らを平和の道具と語っていた、純粋な思いで動く彼女を追い詰めるマスコミに対して、怒りを感じます。
でも、それと同時に、そんなマスコミが動く背景には、情報を受け取る側にも責任があるといっていた、高遠さんの言葉に、ドキッとしました。
2008.03.15 Sat 22:01 | URL | KiKi☆
Re:saruninkoさん
記事読んでいただきありがとうございました!
普段の記事ばかりではなく、こういった記事は是非多くの人に読んでもらいたいと思っています。笑いあるなか真摯な話が多く、いいイベントでした。ありがとうございました!
2008.03.15 Sat 23:34 | URL | N郎♪
Re:KiKi☆さん
ありがとうございました。こちらの呼びかけで来ていただき、またレポートも書かれて、あらためてその行動力、素晴らしいと思います。
おっしゃるとおりですね。高遠さんの話の中の、日本社会のほうが恐ろしいという話に、この国のメディア状況の寒さをあらためて感じました。鎌仲さんがおっしゃていたように、一人一人が発信者になっていく、そんなことが大切なんでしょうね。そういった意味でもKiKi☆さんの自立した行動力、素晴らしいと思います。今後とも宜しくお願いいたします。

2008.03.15 Sat 23:44 | URL | N郎♪
お疲れ様でした☆
偶然、隣の席におじゃましたchiruです。声をかけていただいてありがとうございました。N郎さんがおいしそうに焼きそばを食べていた姿が忘れられません(笑)
高遠さんの話は始めて聞いたのですが、平和への熱い思いが伝わってきました。
鎌仲さんは、本来、日本があるべき姿をしっかりと捉えていましたね。憲法9条がある日本の政府、そこに住む日本人が、どう行動していくのか-自分なりの答えを持っていて、それを明快に話している姿は、いつもほれぼれしてしまいます。あんなジャーナリストになりたい。いつになるか分かりませんが。
なんだか、だらだら書いてすみません。
N郎さん、今後もよろしくお願いいたします。
2008.03.30 Sun 17:06 | URL | chiru
Re:chiruさん
コメントありがとうございました。
>N郎さんがおいしそうに焼きそばを食べていた姿が忘れられません(笑)
ははは、自分、焼きそば好きなんです(笑)
今度一緒に食べましょうね。
鎌仲さん、凄いですね~
こちらこそ今後とも当ブログともども是非宜しくお願いいたします!!

2008.03.30 Sun 22:42 | URL | N郎♪
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