![]() | 未来戦隊タイムレンジャー(1) 特撮(映像) (2004/02/21) 東映 詳細 |
脚本・小林靖子
2月から始まった「仮面ライダー電王」。前作までの停滞からうって変わって、現在ぶっちぎりでおもしろいドラマを展開しているのだが、第1話から先週第7話まで、すべての脚本を担当している小林靖子の貢献度はかなり大きいと思う。・・・・というより、小林靖子が脚本をやっているからこそ、ここまでおもしろい作品に仕上がっているのだろう。
その脚本、人間洞察に優れていて、人が生きていくうえでの真理が提示されていたり、ハッとさせらるような要素がこめられていたり、それでいてセンスあふれる笑いがちりばめられていたりと、ただの脚本ではない。その脚本ゆえに「仮面ライダー電王」のファンになってしまった人は多いことだろう。
スーパー戦隊シリーズや平成仮面ライダーシリーズなど、「小林靖子」の名声は定着し、もはや大御所といっていいだろう。制作会社の東映も、困った時には「小林靖子」という図式が成り立っているのではなかろうか。
俺も、バンドのギターのケンちゃんから「小林靖子」という名前を聞き、その人の書く脚本はおもしろいと聞いて、数ある戦隊シリーズの中でも『タイムレンジャー』に先に手をつけ、はまっていったのだ。
今や「脚本・小林靖子」と言う名声がとどろいている彼女であるが、脚本家になる前はコンピューターソフトの会社で働いていたという。それがテレビ朝日メタルヒーローシリーズの「ご意見・ご感想」コーナーに自分の構想を書いて送り、担当プロデューサーの目にとまって、脚本家・小林靖子へと続いていった。あふれんばかりの創造性を持った視聴者と、面白いものを探し続けているプロデューサーとの思惑の一致が、タイムレンジャーや仮面ライダー電王を生み出すベースとなったというのだから、かなり興味深いエピソードだと思う。
「脚本・小林靖子」がスーパー戦隊シリーズへ登場してくるのは1997年に放映された『電磁戦隊メガレンジャー』からとなる。メガレンジャーの脚本陣営を見渡すと、武上純希や荒川稔久など、東映特撮やアニメの第一線で活躍してきた脚本家が並んでおり、そんな中、途中から参加してきた小林は、後半部でほぼメインライターに近い役割を果たしたという。そして翌年の『星獣戦隊ギンガマン』では戦隊メインライターとして確立し、続く『救急戦隊ゴーゴーファイヴ』を経て、2000年の傑作『未来戦隊タイムレンジャー』が生まれることとなる。
さて、DVDで『未来戦隊タイムレンジャー』の最終回を見終わった後の感想なのだが・・・・とにかく切なかった。タツヤと他のタイムレンジャーのメンバーとの別れ、中でもユウリとの別れ、そして現代にただ一人残され、それでも強く前向きに生きていくタツヤの姿もせつなかったのだが、タイムファイヤー・滝沢直人が亡くなるシーンがそのせつなさの要素を増したと思う。
滝沢直人(演・笠原紳司)=タイムファイヤーは物語の後半部のキーマンとなった。実質的な最終回を次回に控えた第49話「千年を越えて」で命を失うこととなるのだが、第37話「狙われた力」ではその伏線が張られ、滝沢が飼っていた鳥かごを少女に譲るシーンが最後に出てくる。第48話「未来への帰還」ではその少女と鳥かごが再び登場し、そして第49話で重要なシーンを演出することとなるのだ。
この手法に象徴されるように、第1話から最終話までのスタッフロールを見渡してみて、あらためてメインライターである小林靖子の存在感の大きさを感じざるおえない。各所に伏線が張られ、一年間の放送の中でその伏線はしっかりと回収されていったのだ。
ドモンとホナミの恋、タツヤと父親の確執など、タイムレンジャーの中ではいくつかの人間模様が平行して描かれていく。その中でも屈折し、権力欲に取り付かれた滝沢直人のストーリーは印象が強い。
滝沢直人を演じた笠原紳司は、「滝沢直人」の役作りに笠原なりの意見を訴え、脚本の小林はその意見に真剣に耳を傾けたという。最終回で滝沢が亡くなるのも、笠原紳司が小林らスタッフに訴え続けて実現したというエピソードがある。役者の情熱を自らの脚本に取り込み、あのような切ないストーリーに仕上げていった小林の力も、傑作を生み続ける脚本家を考えるうえで参考となるエピソードではいだろうか。
(この話し断続的に続く)
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