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集中してやる・・・時間的に分散させないことのメリット | main | ジョン・レノンが殺された意味(9)
ジョン・レノンが殺された意味(10)
(ジャック・ジョーンズ著『ジョン・レノンを殺した男』 前回からの続き)

チャップマンの生きてきた軌跡を描いた本書の中で、最も衝撃を受けたのは CHAPTER25「ファン・レター」だ。その章の中では、服役中のチャップマンに対し、世界中の何千というレノンファンから送られてきた手紙の一部が紹介されている。その一つ一つが興味深い。これでもかこれでもかという表現を使い、チャップマンのことを最低最悪の人間と罵る手紙もあれば、刑を終えて出獄してきた暁にはチャップマンは殺されるであろうことを示唆し続ける手紙などなど。そんな中でも最も興味深かったのは旧ソ連で育ったレノンファンの女性の手紙だ。旧共産圏であっても、レノンにはその死を悲しみ自殺まで考えたファンが数多くいたという。その歌が国境を越えて多くの人に愛された証明ではないだろうか。あらためてその作品の超越したクオリティー、影響力には驚異を覚えざるおえない。彼が20世紀最大の芸術家の一人であることは間違いなく、音楽の可能性を社会的影響力にまで広げたその功績は計り知れないものがあると思う。

チャップマンは獄中の彼に宛てられた手紙を、その内容によって分類しているという。レノンファンからの非難の手紙もあれば、レノン殺害の動機を聞き出そうとする手紙、単にサインをねだる手紙、その影響力を借りて募金を集めようとする赤十字の手紙もあり、そしてまたレノン殺害の行為を賞賛する手紙もあるという。チャップマンは、レノン殺害を非難する手紙については理解できるが、犯行を賞賛するような手紙や彼の影響力を使って募金を集めようというような手紙に対しては、社会が病んでいるとコメントをしている。そのようなコメントを読む限り、チャップマンの判断能力は正常ではないかと思うのだ。

著者はチャップマンの人生を取り上げることによって、彼も同じ一人の人間であるということを読者に提示してる。フェントン・ブレスラーなどによるCIAマインドコントロール説が正しいとするなら、チャップマンも実はレノンと同じ被害者ということになるのだ。かわいそうな人としてチャップマンに対し同情の念を感じずにはいられなかった。

本書の最期にはチャップマンが獄中で書いた文学小説が掲載されている。その小説には、獄中でつながれたキリストと、そのキリストと会話し、信じたことにより処罰されることとなった主人公の悲しい物語が描かれている。その物語を読むにつけ、チャップマン、そしてその家族のことを思うと胸が痛まずにはいられない。チャップマンは感受性の強い人間であった。彼がレノンを殺害せねばならず、そして自ら悲劇の主人公となっていく様子には、現代社会の底知れぬ闇と理不尽さを感じずにはいられないのだ。

 この本については感想はおわり

(この話、つづく)




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| ジョン・レノンが殺された意味 | 23:00 | トラックバック:0コメント:0
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